ロレックス
ROLEX
腕時計の文字盤にさりげなく記されている「T」の文字。一見すると見逃してしまいそうですが、実はこの小さな記号には時計の歴史や機能が示されています。この記事では、「T」が示す意味やその背景、そして現代の時計との関係までわかりやすく解説します。
「T 」はトリTの表記とは何を示しているのか
1-1. 「T」はトリチウムを意味する
1-2. 放射性物質としてのトリチウムの役割
いつトリチウムが使われていたのか
2-1. 夜光塗料としての優位性
2-2. 軍用時計でのトリチウムの使用
トリチウム表記の種類と見分け方
3-1.「T」単独の意味と表記位置
3-2. 「T SWISS T」と「SWISS T<25」の違い
現代の時計と「T」表記の関係
4-1. 現在もトリチウムは使われていますか?
4-2. スーパールミノバとの違い
トリチウム時計の価値と取り扱いの注意点
5-1. ヴィンテージ市場での評価
5-2. 取り扱い時の注意事項
まとめ
腕時計の文字盤に見られる「T」表記は、放射性物質である**トリチウム(Tritium)**を使用したことを示しています。1960年代から1990年代にかけて、視認性を高めるために夜光塗料として使用されていた物質で、「T」はその略記です。時計によって、「T SWISS T」や「SWISS T<25」といった複合表記も見られますが、いずれも文字盤や針にトリチウムが使われている証拠です。
トリチウムは微量の放射線を自発的に放出する性質があり、この特性を活かして蛍光物質と組み合わせ、暗闇で光を発する夜光塗料として使用されていました。夜間でも時刻が読みやすいため、特に軍用やパイロット用の時計で使われていました。
トリチウムは発光に電力を必要とせず、暗くても自発的に光を発するという特徴があります。これにより、夜間の知覚性が飛躍的に向上し、時計の機能性が大きく高まりました。
特に軍用時計では、暗所でも瞬時に時間を確認できる機能が求められるため、トリチウムは最適な素材とされてきました。 アメリカ軍やイギリス軍などでは、時計に「T」のマークや「T」入りの表記を必須としていた時期もあります。
「T」単体での表記は、シンプルにトリチウムが使われていることを意味しています。 多くの場合、文字盤の6時の位置付近に縮小表記されているため、注意して見ないと見落としてしまうこともあります。
「T SWISS T」または「SWISS T<25」は、スイス製であることとトリチウムの放射線量が25ミリキュリー以下であることを示します。 特に「T<25」は、トリチウムの含有量が制限されていることを明確に示すため、より規制が厳しくなった時代の時計に多く見られます。
現在では、トリチウムの使用は世界的に制限されており、多くの時計メーカーが別の夜光素材へと移行しています。 ただし一部の軍事用時計や特殊用途の時計では、カプセル化されたトリチウム(ガス状トリチウム光源=GTLS)が使用され続けています。 これらには通常の「T」表記ではなく、特殊なマークやラベルが採用されています。
現代の主流の夜光素材は「スーパールミノバ(Super-LumiNova)」です。これは蓄光型で、光を吸収して暗所で発光する仕組みです。放射性物質を含まないため安全性が高く、現在ではほぼすべての時計がこの素材に切り替わっています。トリチウムとの違いは、「自発光」と「蓄光」という点にあります。
「T」表記のある時計は、特にヴィンテージ市場で高い人気を誇ります。軍用モデルや、パティーナ(経年変化)が出た夜光塗料はコレクターにとって大きな魅力です。オリジナルの夜光塗料が残っている個体は価値が上がることもあります。
トリチウムは微量ながら放射性物質のため、取り扱いには一定の注意が必要です。文字盤の塗料が剥がれている場合や、時計を分解する際には、吸い込まないように対策を取る必要があります。また、輸出時にも規制を受ける可能性があるため、購入時に信頼できる販売店を選ぶことが重要です。
腕時計の文字盤に見られる「T」の表記は、夜光塗料として使用されている放射性物質「トリチウム」が使われていることを示しています。特に軍用やパイロット向けの時計に多く採用され、暗くても知覚性を確保するために活用されてきました。現在では安全性の確保からトリチウムの使用は制限され、代わりにスーパールミノバなどの非放射性塗料が主流となっています。